日本を代表する世界的現代美術家である塩田千春さんの講演会に行ってきました!
初めて塩田さんのインスタレーション作品を見たのは、2019年の森美術館での個展「魂がふるえる」
大きな空間に大胆かつ繊細に張り巡らされた赤い糸に、一瞬で心を奪われました。
このようなアートを創り出せる人ってどんな方なんだろう?
いつかご本人を生で見てみたい!と思っていた私にとって、今回の講演会はまたとない貴重な機会でした。
塩田さんって、どんな人?
1972年大阪府生まれ。1996年京都精華大学美術学部卒業。ベルリン在住。
大学卒業後はドイツに渡り、ブラウンシュヴァイク美術大学、ハンブルク造形美術大学、ベルリン芸術大学で学ばれています。
過去に誰かが使っていたベットや衣服、窓枠を用いた大規模なインスタレーション作品で知られています。
生と死という人間の根源的な問題に向き合い、場所やものに宿る記憶といった「不在の存在」を浮かび上がらせてきました。
塩田さんは、国際美術展ヴェネツィア・ヴィエンナーレ(2015年)で日本館代表として選出されています。
言わば、アート界のオリンピックで日本代表を務められたというほどの実力の持ち主なのです。
作品の特徴は?
空間全体を作品とするインスタレーションの表現領域で活躍されています。
特に、赤色や黒色の「糸」を使った作品が有名です。
塩田さんによると、「糸」をモチーフにしている理由は、”空間に線を描けるから”とのことでした。
キャンバスには筆で線を引くように、空間上には糸を使って線を描いているのですね。
また、この糸は、”何かと何かを繋ぐものの象徴”でもあるようです。
学生時代の塩田さん
12歳の頃にはすでに「アーティストになるんだ!」という強い意志を持って芸大を目指していたそうです。
京都精華大学では洋画を専攻し、研鑽を積まれていました。
当時塩田さんを担当されていた講師の方によると、一年生の最初の自由課題で制作した絵画はすでに完成されていたとか・・・!
当時から突出した才能があったようです。
ところが、ある時期から「絵描きになりたかったが、絵が描けなくなった」と挫折も経験されたようです。
すでに絵画領域で表現できることは達成しており、そこからどう展開していくかが見えなかったのでしょうか。
試行錯誤しながら立体や空間芸術へ領域を広げていき、現在のスタイルを確立されたのです。
塩田さんの印象
講演会で塩田さんが登壇され、話し始められた時、第一声がまず本当に可愛らしいお声で印象的だったのを覚えています。
話し方も、ぽつり、ぽつりと丁寧に言葉を紡いでいくような感じで、言葉にみずみずしさを感じました。
ただ繊細な印象だけでなく、数々のエピソードから芸術に対する情熱的な側面も窺い知ることができました。
早いうちから「私はアーティストになるんだ」という強い意志を持ち、学生時代から学内で個展を積極的に開催したり、食事を忘れるほど作品制作に没頭する(あまりにも帰ってこないので心配した周りの学生がおにぎりを握って差し入れしたとか)など、エネルギッシュなお話をたくさんお聞きしました。
興味深いQAセッション
現役の芸大生から塩田さんへの質問で興味深いものがありました。
「作品をつくる時、”視覚的要素(ビジュアル)”と”意味的要素(メッセージ)”が両立しない場合、どちらの要素を優先して残しますか?という問いに対し、
塩田さんは「私の場合は、視覚的要素を優先します」とおっしゃっていました。
理由は、まず視覚的に興味を持ってもらえたら、次のステップでさらに踏み込んで意味を知ってもらうことができるから、ということでした。
確かに塩田さんの作品はまず視覚的に訴えかけてくるものがあり、どの角度から見ても美的と言えます。
このようなQAセッションからも、美術館で作品を見ているだけでは知り得ない作品制作の裏側を垣間見ることができ、大変貴重なひと時を過ごすことができました。
最後に
今回は世界で活躍されている現代美術家・塩田千春さんの講演会に参加してきました。
現代アートを追いかける醍醐味は、作品そのものを楽しむだけでなく、アーティストの生の声で作品解説を聞いたり、質問に答えてもらうなど双方向のコミュニケーションを取ることで、作品理解が深まったり、アーティストの人となりを感じることが利点だと実感しました。
今後も現役アーティストの講演会に参加し、ブログで皆さんに共有したいと思います^^
それでは最後までご覧いただき、ありがとうございました。